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【知らなかった?これが上達の秘密!】『モジュラーシンセ編』

このコラムはワールドミュージックコースのFacebookからの転載です。

第1回:良い音色の秘密

モジュラーシンセは電気信号により制御され、電気振動をオーディオレベルに増幅することにより音として聞くことができます。何も制御しなければ、ただ音が垂れ流された状態になります。モジュラーシンセにおいての”いい音色”とは、ひとことで言い表すことは難しいですが、アナログ特有の滑らかさで永続的な変化を伴った音色が魅力と言えるでしょう。要するに平坦な音色とならないように、音高や倍音、音量などが様々な時間軸で様々な変化が得られるよう工夫するということです。(前田康徳)

第2回:リズムの秘密 その1

モジュラーシンセのモジュールには、一定のパターンを出力するものがあり、周期的なリズムを作ることができます。このリズムを刻むのは電気的な制御によるものですから、正確無比なリズムになるはずです。ところが、実際には思ったほど正確ではありません。いわゆる”ゆれ”があるのです。もちろん基本的には人間よりも正確ではありますが、常に微妙に変動しているのです。それが独特のノリを作りだすわけですが、たとえ機械であってもどこかヒューマンな感じがするものです。これもモジュラーシンセの魅力のひとつだと思います。(前田康徳)

第3回:リズムの秘密 その2

モジュラーシンセでリズムといえば、やはりステップシーケンサー(自動演奏機)ではないでしょうか。ステップ・シーケンサーは、クロックという周期的な信号(テンポ調整可)を受けて動き出しますが、機種によって8ステップ(8個の音符)、16ステップ(16個の音符)など様々です。1ステップごとにトリガーやCV(コントロール信号)を吐き出すことができます。つまり、鳴らすタイミングや音程などを1ステップごとに設定可能で、例えば、それをオシレーター(音源)などに接続すると、あるテンポで設定した音程を発音してくれます。その他、ステップの進み方も色々とプログラムできます。実際の運用では、ステップシーケンサーをスタートさせ、回しっぱなしにします。そしてステップ毎の調整をリアルタイムですることになりますが、これがスリリングで瞬間的な作曲、つまりアドリブ感覚に近くハマります。ネタが尽きるまで永遠にクリエイトできる魔物的な機能です。ところで、このステップシーケンサーは、モジュラー式ではない、オールインワン型のシンセサイザーにも多く装備されています。もちろんバーチャルシンセにもこの機能はあります。ですが、なぜかモジュラータイプのステップシーケンサーほど活用されていないような気がします。もしこの機能が見かけたら、まずはトライしてみましょう。(前田康徳)

第4回:フレージング、アーティキュレーションの秘密

モジュラーシンセの場合、フレージングやアーティキュレーションといった演奏表現は、他の楽器の演奏家と同じで、意識しなければ何も生まれません。特にモジュラーシンセの場合は音すら出ないでしょう。どのような音色でどのような音程で、さらにそれがどのように変化して、いつ音が切れるのか?など一連の流れを考え、それが実現できるようにパッチングしていきます。つまりイメージから具体的な作業に落とし込んでいくわけです。(前田康徳)

第5回:難易度の高い箇所の練習の秘密

ミュージック・シーケンサー(自動演奏装置)という用語は、若い世代に通じるでしょうか?現在の音楽制作は、ハードウェアのシーケンサーからスタートしており、今日ではDAW(音楽制作ソフト)がその機能を継承しています。ところが近年は、ハードウェアのスタンドアローン(単体)タイプのシーケンサーが、時代に逆行するがごとく製作されています。それは単なる復活ではなく、ライブパフォーマンスを意識した新機能が盛り込まれています。その機能のひとつに「ユークリッドシーケンサー」というものがあります。その昔は、きっちり数値で割ったタイミングと、すべてのトラックが同じ拍子の設定しか出来ませんでしたが、このユークリッドシーケンサーは、民族音楽のような独特のタイミングを持ったリズムを、リアルタイムに変化、生成することができます。さらに、トラックごとに拍子の違う、いわゆるポリリズムも可能になるなど、飛躍的に表現領域が拡張されています。例えば、ダンス系の音楽は、”4分打ち”のリニアな”打ち込み”が基本でしたが、今後は、もしかするとユークリッドシーケンサーを活用した表現が台頭するかもしれませんね。(前田康徳)

最終回:表現力の秘密

モジュラーシンセサイザーとヴァイオリンとでは、天と地ほど離れた存在と感じる人もいるかもしれませんが、私の中では同格です。もちろん楽器の機構や音楽ジャンルという側面では、それぞれ大きな違いがありますが、音楽を表現しようとするそのときは、普遍的に同じだと感じます。音を奏でるという一連の動作の中には、意識的なもと無意識的なものが含まれますが、実に色々なことを考えて演奏しています。それが、ひとつの表現に繋がっていくわけですが、モジュラーシンセも同様に、何もしなければただの鉄クズのようなものです。(オブジェにはなるかもしれません)ヴァイオリンに限らず、既存の西洋楽器は、訓練や習慣によって定着している無意識の表現というものがありますが、モジュラーシンセにはそれがありませんので、常に手がかかりますが、演奏する人の思考によって、音や音楽が作られていくのが楽しく、そこが魅力だと思います。表現力の秘密とは、楽器の演奏技術はもちろん大切ですが、その表現についての思考がなければ、放置されオブジェ化したモジュラーシンセとなってしまいます。やはりイマジネーションが一番大切な要素なのではないでしょうか。(前田康徳)