トピックス

【知らなかった?これが上達の秘密!】『クラシックギター編』

このコラムはワールドミュージックコースのFacebookからの転載です。

第1回:良い音色の秘密

クラシックギターにおける「良い音」と言うのはなかなか定義が難しいですが、楽器の扱いに関して言えば、上手に楽器を鳴らして音を遠くに飛ばすことなどがスキルとして挙げられます。
細かく言えば、弦に対する右指の角度やアタックの速度、関節の使い方など様々な要素が関わってくるのですが、大事なのはその音を自分で聴いてコントロールすることだと思います。
クラシックギターは様々な音色が出せる楽器ですから、曲の中で設計図を立て、例えばこのフレーズは柔らかい音にするとか、この和音はメタリックで強くなど、音色と音量、さらにはそのバランスや間(余韻)までもを使いこなすことで、表情豊かで聴衆を惹きつけるような「良い音楽」が奏でられます。つまり「良い音」とは、「良い音楽」を演奏するためにクラシックギターのあらゆる音を使いこなす、と言うことになるかも知れませんね。(井上仁一郎)

第2回:リズムの秘密

リズムという言葉。実はなかなか定義が難しいのです。「あの人はリズム感がいいね」「この曲は南米特有のリズムで書かれている」「君の演奏はリズムが合ってないね」…これらの文章で使われている「リズム」という言葉の定義は全部一緒なのでしょうか?…おそらく違います。普段我々は(音楽を専門としていても)リズムという言葉を曖昧に使っています。

いずれにしても、リズムという言葉は一般の人々にとっても馴染み深い意味を含み、時間軸に関することに使われているようです。どういうタイミングで音を発音するのか、どういう音の長さの組み合わせでメロディーが書かれているのか…そのあたりのことをまとめて「リズム」という言葉を使っているようです。音楽を形作っている要素にはいろいろあります。ハーモニーや音程感などがありますが、実はこの時間軸に関する「リズム」が人間の中で一番認知されやすいと言えます。ハーモニーや音程感は実はある程度のトレーニングを積まないと細かいニュアンスが把握できないのですが、テンポが速いか遅いか、音を発音するタイミングが合っているか合っていないのか…これらのことはトレーニングを積んでいない一般の方でも「認知されやすい」のです。一般の方の生活のなかで、「テンポ」「リズム」という言葉が頻繁に使われているのは、それだけどんな人間でも実体験しやすいものだからなのです。

つまり、一般人でもわかりやすい音楽を作るためには音楽のリズムをデフォルメ(誇張)して伝えればよいです。とはいえ、こういう演奏ばかりを続けていると油っぽい音楽になっていきます。つまり”しつこい”のです。なので、”あっさり”としていながら、いろいろな味をそこに込められるようにハーモニーや音程感などをしっかりと表現していくことが大切です。リズムに関しても、丁寧に扱っていかなくていけません。なんでもかんでも誇張していては、繊細な味、奥深い味は表現できないのです。(富川勝智)

第3回:フレージング、アーティキュレーションの秘密

音楽は音の繋がり、響きを駆使して表現する芸術です。音は一つでも意味を持ちますが、ほとんどの場合はいくつかまとまり、言語でいう単語となり、それが連なり文となります。フレージングは句読点を伴う文を作る作業と考えられます。同じ音の繋がりでも、それをどう組み合わせ、変換するかで全く違う意味になってしまいますね。それが時には重大な誤解を招き、大笑いの原因にもなります。ではアーティキュレーションはどうでしょう?こちらは文字(音)単位の意味と考えると良いです。『下記、柿、牡蠣』は全てカキですね。でも、音の高低やアクセントやテヌート、スタッカートという音楽家になじみのある記号を自然に使って私達はこれを正確に区別しています。「文章を読むように楽譜を読む(演奏する)。」こう考えると作曲家の意図を理解し、演奏出来ます。アナウンサーのように正確な文章(情報)を伝える実力と俳優のように表現出来る力。どちらもその鍵はフレージングとアーティキュレーションです。(小林徹)

第4回:難易度の高い箇所の練習の秘密

難所の克服は、皆さん、大変悩む所ですね。弾けない箇所が有るばかりに、他の部分は弾けているのに、1曲が最後までなかなか完成しないという経験は、どなたもお持ちでしょう。そんな時は、色々とアプローチを変えて、難所の克服に取り組むと良いですね。

①まずは、毎朝、ギターを手にして直ぐに(何もウォームアップしていない段階で)、難所をとりあえず弾いてみるという練習をしてみましょう。その時に、ミスした箇所、正確に弾けなかった箇所を、きちんとメモしておいて下さい。何処をミスしたか覚えていられない場合は、携帯電話の録音機能等を使って簡易録音し、後で聞き返してチェックしてみましょう。そして問題の箇所を、ゆっくりしたテンポで弾いてみて下さい。もし、ゆっくりしたテンポでも弾けなかったら、運指等を再考してみる必要が有るかもしれません。また、ギターの場合は、左右の指のバランスが取れていて、巧く連動している事が大切ですから、左指に問題が有ると思った場合でも、右指の動きのチェックも忘れずにして下さい。右指の動きをきちんと決めていない事から起きる弾きこぼしも、意外と多いものです。

②次に、基本的な技術の向上によって、スキルアップを図り、弾けない難所を克服する方法です。基本的なスケールや、アルペジオを磨く練習は、どなたも工夫して行っていると思いますが、それだけではカヴァーし切れない動きに取り組む事によって、左右の指の動きの敏捷性、可動域を広げるという事が可能になってきます。例えば、左人差指の素早いポジション移動の練習。指板の裏に回している親指との連動も含めて、いかに早く目的のポジションに移動するかを、突き詰めて行くと、実際の曲の演奏に非常に役立つスキルを身につけて行く事ができると思います。また右手に関しては、親指も含めて、様々な運指の可能性を研究する事が、難所克服、上達への早道となります。その際、左手の事はいったん置いておき、開放弦を使って、ひたすら、右指のコンビネーションの追及を行って下さい。どうしてもスピードの落ちる中指&薬指の組み合わせや、親指を含めたpima,pmai等の色々な組み合わせで、隣り合った2つの弦を弾弦してみましょう。その際、普通は使わないとされる小指も含めて練習するのも面白いでしょう。意外なほど弾けなくてあ然とする組み合わせをよくチェックして、強化して行くと、いつの間にか、難所をあっさりクリアできるほどの実力が付いてくると思います。(竹内永和)

最終回:表現力の秘密

楽譜に書かれている事を正確に弾く事。これは基本です。でも同じ曲なのに全く違った印象を持ったという事が有りませんか?人によって喜怒哀楽の感情表現はそれぞれ違うように、楽譜から感じ取ることも十人十色で、色々な解釈が生まれます。そこが音楽の面白いところです。ギターの場合同じ高さの音でも、色々な可能性があります。例えば1弦の解放弦E音は、2弦の5ポジション、3弦の9ポジションでも同音が得られます。細い弦よりも太い弦で弾くと柔らかい音色でヴィブラートもかけやすくなりますし、更に右手の位置、弦に当たる角度を変えることで音色は変わります。どのポジションで、どういう指使いで弾くか、沢山の可能性があります。今は巨匠、名人の演奏もYouTubeで簡単に聞ける時代です。彼らの表現力を堪能してみてください。(中根康美)