大学院音楽研究科には、器楽・声楽・音楽教育学・作曲の4専攻が開設されています。レッスン担当教員や論文・副論文指導担当教員が、音楽芸術についての深い学識と技術を授けることで、研究活動をサポートします。これと並行して、大学院の運営を司る各コースの統括教員が、学生の将来を見据え、高度の能力を備えた人材として、音楽家或いは音楽研究者となるために必要な指導を行っています。
21世紀に単一ジャンルの音楽は存在しません。ジャズの影響を受けたクラシックのカプースチンやストラヴィンスキー、バッハの影響を受けたジャズ、ジャズから生まれたロック、ヒップホップ、ラップ、エスニック音楽の影響を受けた即興演奏など、音楽を創造する音楽家の個性の中で全てが融合し新しいものを生み出しています。
ジャズ&アメリカンミュージック大学院はこのような他ジャンルの音楽とジャズの融合の研究がメインテーマです。大学院JAMコースは学部4年間のジャズの教育、他ジャンルの音楽教育ののちに自分の創造する音楽をより自分らしく追求・研究する場として2023年度よりスタートします。研究テーマは学生が自ら設定し、その研究方法を大学院のプログラムがサポートします。
音楽の融合の例をご紹介しますが、JAMコース大学院ではこれに留まらず、各自が自分のイマジネーションで新しい音楽の融合をリサーチすることが可能です。
蟻正 行義Yuki Arimasa
1983年よりアメリカ・ボストン、バークリー音楽大学にてピアノ・作編曲を学ぶ。在学中にハンクジョーンズ賞、デュークエリントン賞を受賞。1986年バークリー卒業後、同校にてピアノ科助教授として8年間勤務。現在、洗足学園音楽大学ジャズ&アメリカンミュージック“JAM”コース教授。自己の音楽活動とともにジャズの音楽教育に注力している。
ジャズは生誕より100年以上が経過し、そのスタイルも多岐にわたります。歴史的に見ても時代によってスタイルは常に変化し、さらにメインストリームなジャズからラテン・ヨーロピアン・フュージョンなど追求する要素は数限りなく存在します。ジャズを学ぶと一言で言っても、演奏家として、アレンジャーとして、作曲家としてなど様々な方面からジャズを追求することが可能です。
現代に生きるミュージシャンがジャズだけを聴いているわけではありません。ヒップホップ、ラップ、ロック、ラテン、ポップスなどの音楽なしに現代の音楽シーンは存在しません。そのような音楽のルーツであるジャズを学んだ知識や経験に、さらに、今度はヒップホップやロックなど、自分が本来ボトムに持っている音楽を改めて研究し、自分らしい音楽に落とし込む研究をします。
ドビュッシーのような印象派の時代からジャズとクラシックはお互いに影響を与え合いながら発展してきました。クラシックをメインに演奏、音楽制作をする音楽家が大学院の2年間でジャズのエッセンスを学ぶことはクラシックの音楽家にとっても新しい視野を見つけることができます。またデュークエリントンなどのジャズの作曲家はクラシックの音楽に大きな尊敬を持ってその要素を取り入れてきましたので、クラシックに根幹を置く音楽家がジャズを学びその融合の糸口を追求することは、大きな発見につながることでしょう。
クラシックのストックハウゼンから始まったコンピュータ音楽は現代の音楽には欠かせないものです。テクノロジーの発展により、DTMはミュージシャンに必要不可欠になっています。即興性のあるジャズはDTMの音楽に新しい躍動感を与えることができ、またジャズのハーモニーやグルーヴ感を融合させることで、コンピュータ音楽の可能性をさらに広げることができます。
ジャズは本来黒人の民族音楽(エスニック音楽)です。どの民族も独特の音楽を持っており、日本にも邦楽という伝統の音楽があります。すでにタンゴやラテン・ブラジル音楽をジャズと融合させた作品は多く発表されていますが、ほかにもエスニック音楽にはジャズとの融合の可能性が多くあります。また、ジャズという音楽の民族性を追求することも新しい音楽を発見するきっかけになるかもしれません。
専門必修科目
専門選択科目
共通選択科目
オーケストラに匹敵するともいえる楽器を奏でるピアノコースでは、ソリストとしては勿論のこと、アンサンブルピアニスト、また指導者として、これからの新たな時代に求められる人材を育成します。音楽活動に必要な全ての研究を網羅した有益なカリキュラムを用意し、器楽伴奏、歌曲伴奏、指導法、室内楽など、修了後の仕事に直結する技術を身につけることが可能です。
本コースが誇る世界クラスの教授陣におけるレッスンを受講することにより、自身の研究課題である楽曲についても多角的な視点から表現法を研究し、様々な奏法解釈や自身の新たな可能性の発見、さらには指導者としてのアプローチへと繋がります。自身の研究目標を掲げ、本学大学院において2年間の研鑚を積むことで、必ずやピアニスト・指導者としての充実した道が開かれることと確信しております。
専門必修科目
専門選択科目
共通選択科目
管楽器コースではプロの音楽家・指導者を育成するため、演奏実践を重視した独自のカリキュラムを設定しています。「プロフェッショナル特殊研究」ではNHK交響楽団をはじめとするオーケストラ奏者や著名な指導陣のもとで演奏技術、芸術性を学び、コンクールやオーケストラ・プロ吹奏楽団オーディションに備え、プロの現場に対応できる実践的なレッスンを行います。演奏家として大学院室内管弦楽団で交響曲やオペラ・オラトリオへの参加をします。室内楽ではより緻密なアンサンブル力も養い、万全の体制でプロとして自立していく方法を実践します。また世界の第一線で活躍する教授陣による実践授業では、教授陣それぞれの専門的見地からの指導により多角的に音楽を捉え研究していきます。指導陣が一丸となり、皆さんの将来のさらなる飛躍を求め、大切な音楽人生を確実に開花させるお手伝いをしていきたいと思います。
専門必修科目
専門選択科目
共通選択科目
弦楽器コースはソロの腕を磨くことができる「スペシャル公開講座」を軸に、現役オーケストラプレイヤーの直接指導が受けられる「オーケストラ・スタディ」、教える立場になって役立つ「指導法」、他に「大学院オーケストラ」「室内楽」などで構成されています。スペシャル公開講座の授業では、世界で活躍する弦楽器の教員、共演するピアニストの教員を講師に、ソロ、室内楽を問わず公開の形で授業が進められます。人前で演奏するチャンスが多く、様々な教員のアドバイスを受けられることで、テクニック的にも音楽的にも力がつくなど、学生たちは確実に演奏の力を上げています。講座を聴講することでも視野が広がり、自分の演奏を見つめ直すきっかけになるのです。また、ピエール・アモイヤル氏、竹澤恭子客員教授、イーストマン音楽学校教授オレグ・クリサ氏、フェデリコ・アゴスティーニ客員教授など、世界で活躍する音楽家の特別レッスンが数多く行われています。
専門必修科目
専門選択科目
共通選択科目
クラシックギターは弦楽器コースの中にありますが独自のカリキュラムを採っています。「特別レッスン」は世界的に活躍するトッププレイヤーによる個人レッスンで、高度な演奏技術、音楽表現を身近に感じ学べる貴重な体験です。「アンサンブル研究」ではフルート、ヴァイオリンなど他の楽器とのアンサンブルを実践することにより、ソロとは違った伴奏としての立場、和声解釈や相手とのコミュニケーションをはかることで、音楽的視野を広げ多様な表現力を培います。「合奏指導法研究」では学部生とのギター合奏を介して、教える側になった時に必要なスキルを習得します。このようなカリキュラムは演奏家、指導者としての将来に有用なものです。努力を重ねて、個性あふれる演奏家、指導者としての将来を築いていきましょう。
専門必修科目
専門選択科目
共通選択科目
打楽器コースでは、学部を終え大学院に来た皆さんが、より深く自分の追求し たいことを学べるよう、一人ひとりに合った環境づくりを心がけています。専門 実技の丁寧な個人レッスンは勿論のこと、プロフェッショナル特殊研究の講座で 視野を広げることができるのも大学院ならではです。また、大学院室内管弦楽団、 大学院打楽器アンサンブル以外にも、折に触れ学内での様々な演奏会出演の機 会があります。2 年間の大学院生活で、演奏面のテクニックだけではなく音色作りにこだわり、楽器、作品、作曲家についても深く掘り下げて新しい知識を増 やしてください。日々の練習の中でつい忘れがちになってしまうものを見つめ直 し、学修、実践しながら演奏家、教育者など、将来自分の進む道を見つけてい くことができるよう、可能な限りのサポートをさせていただきます。
2020年度「プロフェッショナル特殊研究1・2」開講講座
専門必修科目
専門選択科目
共通選択科目
歴史の浅い電子オルガンは、まだ奏法、教育法などが確立されていないのが現状です。しかし、近年、楽器の持つ表現力が著しく進歩を遂げ、それと同時に演奏者の能力が問われることになりました。様々な音楽表現が可能なことから、あらゆるジャンルの音楽を学ぶ必要があります。①作品分析 ②演奏法 ③編曲法 ④創作 ⑤アンサンブル(クラシック、ポピュラー)を伝統的なものからコンテンポラリーまで学びます。これに加え、スタジオエレクトロニクスやそれぞれの研究の課題に必要なものを、専門的に学べるようにカリキュラムを作成していきます。楽器の特徴を理解することにより、新しい可能性を追求し挑戦していくことになるでしょう。電子オルガンのソロ作品に限らず、他楽器とのコラボレーションなどにおいて、将来、電子オルガンの先駆者として活躍することが目標です。音楽家としての基本を学びつつ、それぞれの研究課題を深く追求していきます。
専門必修科目
専門選択科目
共通選択科目
伝統をしっかりと踏まえたうえで、新しい価値創造に挑戦することのできる邦楽演奏家、そして日本や東アジアの伝統音楽や伝統楽器の素晴らしさを世界に発信できる人材を育成します。箏、三味線、琵琶、尺八、笛、和太鼓などの専攻楽器について高度な演奏能力と優れた芸術性を獲得するとともに、国際的にも通用する演奏家としての知識や教養の習得も目指します。個人レッスン、アンサンブル演習、副論文作成、作品研究、楽曲分析法などに一人ひとりの要望に合わせた内容も加味して、オーダーメイドのカリキュラムを作ります。それによって、本学講師および様々な一流演奏家の特別レッスンや共演、学内リサイタルの実施、新作初演、コンチェルトソリストとしてオーケストラとの共演、オリジナルの邦楽ミュージカル演奏出演など、日本の伝統音楽に留まらず様々なジャンルとのコラボレーションなども実現できます。夢と希望の実現のための強力なバックアップを約束します。
専門必修科目
専門選択科目
共通選択科目